朝起きたら体がだるい。なんとなく予想して、体温を測ってみれば微熱。
まぁ、いいか、と部屋を出た。
微熱
「おはようございますっ!!十代目!!」
朝から威勢よく挨拶。
ちょっと遠慮がちなおはようという答えはいつも通り。
「今日もいい天気っすね」
「そうだね」
見上げれば底抜けの晴天。雲ひとつない。
「十代目、カバン持ちましょうか?」
「い、いいって、別に」
毎日繰り返される会話は既に日課。
でも、そこで気がつく異変。何かがおかしい。
何が、と問い返されれば答えられないような微妙な変化。
伸ばした手が相手の額に伸び、ぺたりと張り付く。
そこは、微かに自分の体温より熱かった。
ぴくりと相手が反応する。
ふつりと湧く感情は、怒り。
「獄寺君、熱ある・・・」
発した言葉に相手の動きが止まるのが分かった。
じっと見つめれば目が泳ぐ。
「いや、大したことないっすよ。微熱ですから」
「休みなよ、学校」
その提言に言葉を詰まらせる相手。
「じゅ、十代目を独りにするわけにはいきませんから」
多分、言っている本人すら分かっているような苦しい言い訳。
本心は?
「俺なら大丈夫だよ」
山本もいるし、そう意地悪で付け加えようとしてやめる。
「でも・・・」
どんどん相手の顔が情けないものになっていく。
手を取った。いつもより少し高い体温。
手を引っ張って相手の自宅へ向かう道を進む。
「十代目!俺は大丈夫ですからっ!」
握られた手を強く引っ張り反抗する様はまるで子供。
ぴたりと足を止め、相手の目を覗き込む。
「俺は、大丈夫ですから・・・・・・・傍に、十代目の傍に、いたいんです」
やっと聞き出せた本心に口元が緩む。
「じゃ、俺も休む」
そう言えば、驚いたように見開かれる瞳。
「で、でも・・・」
「その代わり、今日の授業の部分、獄寺君が教えてよね」
また、手を引っ張る。今度は先ほどよりもゆっくりと。
「いいんですか?十代目」
「何?俺に学校行ってほしい?」
「そんなことないです!!」
「じゃ、もう文句言わない」
そう言えば、相手の顔も嬉しそうに緩んでいく。
いつもより少し熱い掌。
ちょっとこんな日もいいかも、なんて思ったりする。
END
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