猫舌さんとコーヒー



「コーヒーでイイですか?」

「うん、ありがとう」

いつもと変わらない会話。
いつもと変わらない君の後ろ姿。

コーヒーを淹れる仕草と共に動く背中を見つめ、俺はソファに座り込む。

なんだかここは安心する。

「どうぞ」
満面の笑みで差し出されたカップを受け取る。

じんわりカップの温もりが手に染み込み、気持ちが良い。

「いただきます」

そう言って一口。
コーヒー独特の香りが口に広がり、次に甘さと苦みが乾いていた舌を潤した。

「美味しいよ」
笑ってそう言えば、君も嬉しそうに笑って、俺の隣に腰を下ろした。

カップを口元に寄せ、盗み見るように君の横顔をみる。

湯気がかかる君のきれいな顔。
ミルクたっぷりの俺のとは違うブラックコーヒーを口にする君の姿はいつ見てもカッコイいと思う。


ふと、気が付いた。


「あ」

小さく声を漏らした俺を君が不思議そうに見つめる。
「どうかしましたか?十代目」
「ううん、なんでもない」
笑みを浮かべ首を振る。


気が付いてしまった。君の優しさ。


そっと隣の君に近づく。君の体が一瞬緊張したようにこわばったのが分かった。

心地良い暖かさのカップを両手に包むようにして握る。

猫舌で苦いものが苦手な俺の為に作られたぬるく甘いコーヒーを、もう一口飲んだ。


                                        END



+++++++++++++++++++++

 拍手御礼第一弾!その5!
 獄は十代目の好みを知り尽くしてるとイイです。
 異常なほどに(笑

≫掲載期間:06年8月20日〜07年3月22日