弱点
その姿が目に入ってすごく嬉しくなった。
一瞬その名を呼ぼうとする。
そして思い留まる。
少し考え、驚かそうと静かに近付き手を伸ばした。
驚く姿を想像して。
が、不意に相手が動き、背中を叩くはずだった自分の手が相手の背中をかする。
「うっぁ!」
奇妙な声と共に相手の手から書物の束が豪快な音を立てて落ちた。
「陸遜・・・・?」
あまりにも意外な反応に名を呼ぶと、陸遜は驚いたように振り返る。
「ちょ、趙雲殿・・・・!?」
陸遜の手はしっかりと自分自身の背中を抑えている。
「大丈夫か?」
陸遜は慌てたように大丈夫ですと手を振って言うと、落ちた書物を拾おうとする。
そこである考えに思い至る。
それを確かめるには試してみるしかない。
人差し指で陸遜の背中の中心を撫でる。
「うわぁっ」
再び陸遜の手から書物が流れ落ちる。
「な、何するんですか!?」
「もしかして弱いのか?背中」
陸遜は問いに答えない。ただ口をぱくぱくと動かしていた。
思わず笑みが零れる。
「わ、笑わないで下さいっ!」
「いや、かわいいなと思って」
こみ上げる笑いを留められずに笑い続ける。
こういうことを言うと怒るのはわかっていたけど。
一生懸命笑いを止めようとする陸遜。
――――そんな君をひどくいとおしくと思う
End
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