気付いてはいけないことがあった。
 それはすぐ背後、もう首にすら手が掛かっていたのだ。

 正体は、振り返れば分かるはずだった。

 それでも振り返らず、気のせいだと自分に言い続け、気付かない振りをした。
 首を絞められても、苦しくない振りをした。

 そうすればきっとそれはなかったことになる。
 そうすればきっと、自分は自分を保ち続けられる。

 異常。
 あんなものそれ以外の何者でもない。

 じわじわと綿で首を絞められるように。

 ありえない、ありえてはいけない
―――苦しくて、苦しくて。

 言ってはいけない。
―――言ってしまえば楽になる?


 は、と一つ息を吐き、陸遜は自嘲気味に笑った。

 振り返るまい、そう言い続けてきたのに、たった一瞬、その気の緩みが全てを無に帰した。

 自分の肩に手を置き、そこに残る温もりを確かめる。
 壁に背を預け、ズルズルとそのまま床に座り込んだ。

 たった一度、触れられただけのそこが酷く熱くて、その熱が切なくて嬉しくて悲しかった。


「好き過ぎて、もうどうしようもない・・・」
 呟いて、認めてしまえば、その首を絞める苦しみすら心地よいと思える。


「趙雲殿・・・」


 名を呟いて。
 肩を抱いて。
 自分の愚かさに涙を流す。


 この異常な感情が、自分の息の根を絶つまで。


―――どうかあなたがこの感情に気付きませんように



                                END


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陸遜片思い話でっす。
当サイトでは受けは基本愛されキャラなのですが、たまにはと思いまして。
辛い片思いは切ないけれど胸きゅんですよねvv
(自分のだとあんまり萌えませんがね!)

≫2007年2月28日