俺はどうかしてる。

 誰か助けてくれ。

 コイツを誰か引き離してくれ…。



   stop me



「本当に寸胴じゃのう」


 不意に漏れ聞こえてきた言葉に俺はゆっくり振り返る。

「人の着替え見ながら、そう言うことつぶやくのやめてよ」
「仕方ないじゃろ、本当のことじゃ」

 余計なお世話だ、思わず喉元まで来た言葉を飲み込む。


 宙に浮いたその男、鷹見与作に俺はとりつかれている。
 はっきり言って俺に落ち度はない。
 それなのにこの言い種に頭に落ちる鉄拳、過酷なトレーニングと俺は既に死にそうだ。

 最近真面目に除霊を考え始めた。

 除霊って幾ら位するんだろ…?


「しっかし、筋肉もつかんのぉ」

「人の裸、ジロジロ見るなよ」

 そう見られると着替えづらいんだよ。
 一つ大きなため息を吐く。

 さっさと着替えてもう寝たい。今日も走ったせいで体はクタクタだ。

 Tシャツを着ようと手を伸ばした。

 その時、背中に張り付く冷たい感触。


「うっ」


 せっかく手にしたTシャツが床に落ちる。

 その冷たい感触はそんな俺を無視して背中を這い回る。
 冷たい、鷹見の手が背中を撫でる。


 冷たい、それだけの理由じゃなく心臓が跳ねる。


「うっ、冷たい、よ!」


 そうやっと文句が出る。
 そうして手もやっと背中から離れた。


 安心する反面、名残惜しく感じてる俺。


 うわ、俺、本当にどうしたんだ…?


 そっと後ろを振り向けば、考え込んでいる鷹見と目が合う。


「なんじゃ?」

「ベ、別に…」


 文句を言おうとしたが、上手く言葉が出てこなかったのでやめる。
 落ちたTシャツを広い、やっと着る。


 未だ落ち着かない心臓。
 理由は分からなくとも、何故だか危機感を感じる。

 このままじゃ、ダメだ。離れなくては、コイツから。

 それでも、そう考えると胸を刺す針のような鋭い痛み。


 俺、どっかおかしいんだ。
 何となくそう思った。


「おい、チビ」


 呼ばれてまた心臓が跳ねた。せっかく落ち着いたのに。

「な、何…?」

 平静を装って振り返る。

 こんなやつ、いなくなった方が清々するのに。


「明日からワンセットずつ増やすぞ」


 突然の言葉にいまいち理解が追いつかない。
「はぁ?」
「トレーニングじゃ。このままじゃ、甲子園に間に合わん」

 ワンセットって…。

「無理だよ…」

 思わず呟けば飛んでくる拳。



 やっぱ除霊してもらおう。

 心に堅く誓いながら俺は痛む頭をさすった。



                                                       END



++++++++++++++++++++

 いや、なんてか、勢いで・・・。
 書いてる最中は本当に楽しかった!(いい笑顔)
 こんなものでも鷹太と言い張ります!
 鷹太大好きですvv烏太も大好きvvもちろん、高太も大好きさ☆
 また書きたい、です。

≫2006年9月8日