「獄寺君って、俺のどこが好きなの?」

 そうポロリと漏らした俺の質問に君の顔がどんどん真っ赤になっていく。
「多すぎて言い切れませんよっ!!」
 両手を勢いよく左右に振りながらそういう君が可愛くて思わず意地悪したくなる。

「じゃ、一番好きなところは?」



   繋ぐ鎖



 俺の質問に獄寺君が黙り込んでしまってからかれこれ3分。
 まだかなぁ、などと考えながら彼の顔を観察する。
 美しく整った顔。女子が騒ぐのも分かる。男の俺ですらたまに見とれてしまうのだから。
 今は眉間に皺を寄せ、深刻に考え込んでいる。

(まじめな顔してればすっごくカッコいいのに)
 正直な感想。
 クラスの女子がこの場にいたなら悩殺されるだろう。
 ただ、あいにくここは俺の部屋で、今は俺と獄寺君しかいないからこの顔を見られるのも俺だけというわけだ。

 視線を顔から首、肩、手へと移す。
 いつ見ても自分のそれとは違い逞しく男らしい。手には火傷の痕も多いがそれもまた彼を男らしく見せていた。


 性格以外、どこをとっても完璧だと思う。
―――だからこそ、俺は常に不安なんだ。


 獄寺君に好きだと言われて、正直最初は戸惑った。
 自分も好きなのだと気付いたのは告白されて一晩後。
 告白された夜、ありえないぐらい獄寺君の顔とか声とかが頭から離れなくてほとんど眠れなかった。
 結果、朝には既に自分の心の大半が彼に占領されていることを自覚させられた。

 それからは余計に獄寺君の存在が自分の中で大きくなっていった。
 獄寺君といるだけで俺は幸せで、触れられたりすると幸せすぎて涙が出そうになる。

 だから、それを失う恐怖が常に俺にまとわり付いた。
 獄寺君を失えば自分は立っていられないから。

 獄寺君はカッコいいから、いつか自分以外に好きな人が出来て自分から離れていってしまうのではないか。
 まして自分は男で、獄寺君も男なのだ。
 こんな関係、いつ消え失せてもおかしくないと思った。

 そんなことはありえないと、何度も自分に言い聞かせた。
 それでも不安は俺を後ろから付回し続けた。

 だから―――


「スミマセン!十代目!」
 突然発せられた獄寺君の声に、はっとして俺は慌てて視線を上げた。
 そこにはさっきまでの真剣でカッコいい獄寺君じゃなく、いつもの情けない獄寺君がいた。
「俺は十代目の全部が好きです!全部一番です!」
 まじめな顔を出そんな歯の浮くようなことを言う獄寺君に思わず、俺は笑ってしまう。

 獄寺君は気付いていない。
 それこそが君を繋ぎとめるための鎖の一本だと言うことに。

「獄寺君らしい」
 そう言って笑うと安心したように獄寺君も微笑む。
「ありがとう」
 一言お礼を言うと、獄寺君が勢いよく抱きついてきた。
 背中に回された手の温もりを感じ、香りを感じ、安心する。
 オレも獄寺君の背中に手を回すといっそう強く抱きしめられた。

「好きです、十代目。愛してます!」
「うん、俺もだよ」

 君がささやく愛、俺が呟く愛。
 その言葉一つ一つが鎖になって君を俺の中に閉じ込める。
 自分でも卑怯だと思う。
 こんな話題を振れば必ず君は愛をささやいてくれると分かっているから。
 それでもやめられないのは君を繋ぎ止めておきたいから。


「大好きです、十代目」

 また一つ鎖が増えた。



                                                       End



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 黒ツナっぽいものができました。
 なんだろう。当初はそんな気なかったんですが。
 なんだかんだで、ツナも独占欲があればいいデス。
 でも絶対表には出しません。
 悔しいから(笑)

 それでは、こんなところまで読んで頂き感謝感激です!
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≫2006年3月17日